
働き方改革で介護のあり方はどう変わるのか?
投稿日 2019/03/22
最終更新日 2019/05/01
現在、わが国が取り組むべき大きな課題として、少子高齢化による労働人材の確保、ライフスタイルや働き方の多様化が挙げられます。この問題への取り組みとして政府が推進してきたのが「働き方改革」です。いよいよ2019年4月に施行が迫るこの改革で、在宅介護がしやすくなるのでしょうか。
働き方改革とは
働きすぎといわれ続けた日本人。勤勉で真面目な国民性ゆえ、長時間労働がなあなあで済ませられてきた部分もあります。しかし、人口が減り、労働力が不足することが予測される中、従来のやり方では優秀な人材の確保は難しくなっていく一方です。
そこで、働く人の事情に応じた柔軟な働き方をめざし、さらに仕事も生活も調和させる「ワーク・ライフ・バランス」を実現させるため、法律を見直すことを決定。これが「働き方改革」です。一億総活躍社会を実現するため、より多くの人が働くことを念頭におき、さまざまな改革に着手しました。
長時間労働をあらため、長時年次有給休暇を取得しやすくするなど具体的なルール改定、残業時間の上限を規制などが改革の注目点です。
在宅介護への影響は?介護はしやすくなるのか
仕事と介護を両立できず、職場からの戦線離脱を余儀なくされる介護離職者の存在は、いまや社会問題となっています。政府が推進する働き方改革が、仕事と介護の両立に悩む人たちを助ける切り札となることが期待されているのです。
働き方改革は、労働者のおかれた事情、個々の背景に配慮することを強く前面にアピール。当然、仕事をしながら介護をしなければならないという事情が、より考慮されることになりました。会社側に介護休業制度の導入を推奨しています。介護休業の分割取得、介護休取得単位の柔軟化、介護休業給付金の引き上げ等々、制度は拡充されました。
社員から介護休業の申し出を受けた会社側は、対象家族が要介護状態にあることを確認し、休業を認めなくてはなりません。会社側が、就業規則などで介護休業制度を規定していない場合でもです。とはいえ、介護休業制度の周知は努力義務にとどまっており、規定しなくとも罰則があるわけではありません。
また、長時間労働、つまり残業については、残業時間の上限を決め、規制を行うことが決まりました。これにより、残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこの時間を超過できないと決まったのです。厚生労働省(厚労省)によれば、1947年の「労働基準法」制定以来、初の大改革であるとしています。
しかし、これはあくまで「原則」であって、臨時かつ特別の事情があり、労使が合意している例外も以下のように認められています。
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
- 月100時間未満(休日労働を含む)
ul>
一方、働き方改革は、正社員と非正規社員(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の待遇の差をなくすためにルールを徹底させています。職務の内容をはじめ、基本給や賞与などの面まで待遇に差をつけることは禁止されることになりました。
非正規社員でもスキルがあれば、正等に評価を受け、収入増につながることを意味します。しかし、人によっては、より厳しい評価を受けることも。非正規社員間でも格差が生まれ、スキル次第では収入減も考えられます。
介護と仕事の両立のために
働き方改革の導入は、日本型の雇用システムを変えることでもあります。これまでのように年功序列で評価されることはなくなり、スキルや成果のみで評価されることになるのです。これまで以上に実力主義社会が浸透していくでしょう。
何年働いたから、どれだけ働いたから……という判断基準は通用しないのです。スキルがない人は仕事や職場を選択する幅は確実に狭まります。裏をかえせば、スキルがある人が正しく評価される時代になっていくということ。業務への知識や技術を深め、常にブラッシュアップを怠らない人、スキルを身につけた人だけが生き残れる時代が到来したのです。
働き方改革を味方に!
働き方改革は、生産性を高めた働き方が求められる、厳しいルール改正という意味も持ちます。介護と仕事の両立には個人の努力も必要となってくるのです。労働者にとってはシビアな面もある今回の改革。これを契機にさらなるスキルアップをめざしましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
関連記事
- 高額介護合算療養費って何?分かりやすく解説
高齢者の介護費用、医療費用は、毎年のように制度の改正が行われ、本来保障されるべき負担額の上限が吊り上げられています。もともと収入源の少ない高齢者やその生活を支える家族にとっては、年々厳しさを増していま
詳しくみる - 介護施設にあったほうが良い医療サービス
介護施設が提供している医療サービスは、なにも医療行為に限定されたことではありません。万が一の時の医療機関との連携など、快適で安心した生活を送るために必要なサービスがたくさん用意されています。 しかし、
詳しくみる - 在宅医療に必要な費用とは?利用できる保険はどれ?
現在、介護もいろいろな形を選べるようになりました。「住み慣れた自宅で治療、療養させてあげたい」「病院に通うのが大変になので、在宅医療を考えている」というご家族も多いことでしょう。 しかし、病院での治療
詳しくみる - 介護施設での虐待はどれくらいの確率で発生する?
高齢化が進み、介護を受ける人の数も増え続けています。そして同じく表面化し、深刻な課題となっているのが高齢者虐待です。2006年4月に施行された高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する
詳しくみる - どんなに辛くても絶対避けるべき介護離職
在宅介護を何年も続けていると、仕事を辞めて介護に専念しようと考え始めるのも珍しくはありません。職場と自宅の往復で介護と仕事に明け暮れていると、心身ともに疲労が蓄積します。どちらかを手放して時間を取ろう
詳しくみる - 介護うつにならないためにしておくべき5つのこと
在宅介護をしていれば、どんな方でも常に「介護うつ」になる危険があります。うつ病を発症する方には性格的な特徴があるといいますが、介護うつに限っていえば、おそらくどのような性格であっても危険度に違いはあり
詳しくみる
あなたにおすすめの介護施設
エリアから探す
全国の介護施設を検索することができます。都道府県を選択してください。