
高齢者虐待はなぜ起こる?原因と対策
投稿日 2019/03/22
最終更新日 2019/07/09
TVや紙面等では、連日のように、高齢者虐待のニュースが取り上げられています。それでもこれらは、氷山の一角にすぎません。在宅介護の中で、または介護施設の中では、まだまだ多くの高齢者虐待が存在します。虐待というと、誰もが「身体的虐待」だけをイメージしがちです。しかし虐待には、「介護や世話の放棄」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」があります。虐待の原因として、一番多いと考えられているのが、「介護疲れや介護ストレス」です。特に在宅での介護では、家族という「しがらみ」の中で、精神的負担や時間的負担、肉体的負担をより大きく感じてしまいます。統計では、実の息子からの虐待が一番多く、次に夫や娘となっています。高齢者虐待の原因には、どのようなものがあるのか? また虐待を防ぐには、どうすればよいのか? それらを具体的に考えてみましょう。
在宅介護でも施設介護でも精神的ストレスが一番大きな原因
虐待には、「在宅介護の中で起こる虐待」と「施設介護の中で起こる虐待」があります。同じ虐待ですが、その原因は少し違ってきます。
虐待の原因は、精神的負担、時間的負担、肉体的負担、そして経済的負担等です。
在宅介護の場合には、それら全てが虐待の原因となります。しかし施設介護の職員には、経済的負担は無く、精神的、時間的、肉体的なストレス等が原因でしょう。
中でも一番大きいと思われるのが、どちらも精神的な負担です。特に認知症の場合には、そのストレスが更に大きくなります。
認知を発症した場合、被介護者とのコミュニケーションが、非常にとりにくいです。勿論、その症状によって違いはあるのですが、会話が成り立たない場合もあります。
例えば、起床時に着替えを行おうとしている時、被介護者が「今はまだ夜だから寝る」と、言い出すことがあります。
介護者には、「早く着替えて朝ごはんを食べましょう」という気持ちがあるのに、被介護者は「夜だから寝る」と言い張って、着替えようとしません。
この状況に上手く対応して乗り越えられれば、虐待にはつながりません。しかし、いつまでも同じ状況が続くとなると、介護者は、つい強引な行動をとってしまいます。
虐待がより起こりやすい在宅介護
在宅介護と施設介護の大きな違いは、被介護者が、家族であるかどうかです。被介護者が肉親である場合には、これまで一緒に暮らしてきた関係が、大きく影響します。
介護者が親(被介護者)の介護を行う場合、どうしても主観的な感情が入ります。しかし施設では、客観的な介護を行うことが可能です。
また家族の中でも、特に未婚の男性(息子)による虐待が多いことが、調査結果に表れています。
東京や大阪という大都市で、一人で仕事を続けながら、親の介護をしている。そのような場合に、虐待が多く発生する傾向にあります。
結婚して家庭をもった経験が無く、家事や介護に不慣れな未婚男性のストレスが、特に大きいのだと思われます。
これまで一緒に生活してきた親(被介護者)が、何もできないことに介護者は戸惑いを感じて、「少し前までは何でもできたのに」と思ってしまいがちです。
その落胆の感情が、苛立ちになり、虐待へと繋がってしまいます。
精神的負担や時間的負担によって孤立してしまう
在宅での介護は、特に「精神的負担」「時間的負担」から、孤立してしまう場合が多くあります。
これまでは時間的な余裕もあり、友人と一緒に食事をしたり、スポーツクラブで運動をしたりすることができました。
しかし毎日の介護により、時間に拘束されてしまい、自分の欲求を満たすことができなくなってしまいます。
ストレスの発散ができない日々が延々と続くと、介護者は少しずつ落ち込んでしまい、「介護うつ」にもなりかねません。
自分が加害者にならないために
介護の場面では、苛立ってしまうことがとても多くあります。特に認知症の場合等は、理解できない言動や行動が介護者を惑わせます。
重要なことは、「介護をひとりで抱え込まない」ことです。ひとりで介護をしなければならないという思い込みが、虐待へと繋がってしまいます。
できるだけ多くの人と、介護の協力体制を作ってください。それでも苛立ちや限界を感じるようでしたら、迷わずに施設への入居を考えましょう。
まとめ
高齢者の介護には、大きなストレスがかかります。中でも精神的なストレスは、常に苛立ちを感じ、虐待へと繋がってしまいます。
まずは介護者の生活を主にして、完璧な介護は求めないようにしましょう。常に余裕をもった、介護生活を心掛けましょう。
そして介護に限界を感じ始めたら、できるだけ早く、施設への入居を考えましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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