
口腔ケアに非協力的な高齢者は何を思っているのか
投稿日 2019/01/08
最終更新日 2019/05/29
在宅歯科治療(訪問歯科治療)で自宅や施設へ訪問したときに、口を開けてくれない高齢の人がいます。自宅で介護をされている方は、身内にも同じように口を開けず口腔ケアに非協力的な姿を見ることがあるのではないでしょうか。
実は、口腔ケアに非協力的な姿は人間の防御行為なことが多いです。これは、歯科関係者だけでなく介護をしている方にもぜひ知っておいてほしい内容です。
高齢者の防御反応
口腔ケアを実施しようとすると、高齢者が口を開いてくれないという状況になったらみなさんはどのように対処をしますか?日頃から介護をしている場合は優しい言葉をかけられず、「開いて」と言ってしまうかもしれません。その時は開けるかもしれませんが、その後もまた同じように自然に開けてくれないことが多いです。
実は、これは高齢者が防御反応として行っていることがほとんどです。ここからは、あくまで傾向の話で実際に介護している高齢者の性格や今までの生活などを総合的に判断する必要があります。一つの指標として活用してください。
高齢者でも、今まで自分で自立した生活をしていた人は家族に口の中を掃除されるのを嫌がる傾向が強いです。その一つとして、羞恥心があります。例えば、オムツをしているからトイレをして良いといわれても理性があるとできないですよね。また、オムツを交換してもらうにしても、家族にケアしてもらうのが少し躊躇する人がいるかもしれません。口腔ケアの際に口を開けたがらない高齢者にも同じことがいえます。
家族に口の中をみられるのが嫌な人や、口をゆすいでコップに吐き出すのが嫌だという人もいます。つまり、口を開けたくないという心理は高齢者のわがままではなく自己を保つための防御反応であることが多いです。
口を開けない他の理由
口を開けない他の理由としては、以下のことが考えられます。
顎関節症
顎関節に炎症が起きているか、顎関節の軟骨に以上が出ている場合、顎関節症となります。顎関節症になると口の開閉運動が難しくなり高齢者では、口を開けたがらないことがあります。
口腔内潰瘍
口内炎やびらんが口腔内にできている場合は、口を動かすだけで痛みを感じます。口腔内にできものができている場合は、口を開けたがらない高齢者が多いです。
理解できない
認知症や耳が遠いなどの理由で、家族の声が聞こえない場合は口を開けられないことがあります。しかし、これは悪気があってしていることではないです。絵に描く・字で伝えるなど方法を変えてコミュニケーションを取るようにしましょう。
不安感
口を開けてから何をされるのかわからない状態でパニックになると口を開けられないことがあります。そのため、高齢者にこれから何をするのか伝えると効果的です。
円滑に口腔ケアを実施するには
高齢者と円滑に口腔ケアを実施するにはどうしたら良いでしょうか。家族であっても次のポイントに注意してみましょう。
信頼関係を作る
家族といっても義理の親の場合は高齢者が遠慮する傾向があります。遠慮しないで口を開いてもらうためにも、信頼関係をまた構築していく必要があります。
ケアを無理にしない
明らかに口臭がひどい場合や食べ物が口の中に残っている状態を除いて、無理やり口腔ケアをする必要はありません。口を無理やり開けて口腔ケアをしないようにしましょう。
できるだけ簡潔なケアで爽快感を重視
口腔ケアはできるだけ簡潔して、ルーティン化すると実施しやすいです。また、口腔内に対しては爽快感を強く意識させるためマウスウォッシュなどを併用すると良いでしょう。
高齢者の口腔ケアは簡単にできるようで、協力が必要になることが多いです。高齢者から協力的な態度をとってもらえるように介護者も一工夫してみましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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