
介護におけるバイタルチェックの必要性
投稿日 2019/03/27
最終更新日 2019/04/25
介護とは食事や排せつ、入浴などの介護を通して、介護される方が快適な生活を送られるようにお手伝いすることですが、中でも大切なのが介護される方の健康管理です。そのため、日々のバイタルチェックが不可欠となります。
バイタルチェックとは、体温、血圧、呼吸回数、脈拍数などのバイタルサイン(「生命兆候」と訳されます)を記録する医療行為です。これらの数値を確認し、記録を重ねることで、些細な体調の変化を見のがさずに介護される方の健康を守ることができます。
介護の現場で行われるバイタルチェック
バイタルチェックは医療行為に分類されるため、長い間、看護師のみに許された行為でした。
しかし近年は医療機器の進歩により、医療知識を持たない方でも簡単な操作でバイタルチェックができるようになっています。デジタル式の体温計や血圧計は、一般家庭でも広く普及しているので、操作の仕方をご存知の方も多いのではないでしょうか。介護の現場で行われるバイタルチェックもそのような医療機器を用いて行われます。
体温測定
デジタル体温計を使ったことがない方はおそらくいないでしょう。介護の現場でも体温測定は必ず行われるバイタルチェックの一つです。
重ね着や室温の高さなどですぐに上昇したり、肌寒い時には反対にすぐ下がったりする体温は、その時どきの体調を見るには大変適した指標となります。体温が高いからといってすぐに風邪を疑うのではなく、上着を脱いでもらう、室温を下げてみるなどしてから改めて計り直した時に平熱であれば問題ありません。平熱には個人差がありますが、一般的に37.5℃を下回っていれば心配ないと言われています。
しかし37.5℃未満であっても手足が異様に冷たい、ご本人が寒がっているといった時は、体温を下げることよりもご本人の快適さを優先して保温に努め、一刻も早く医師の判断をあおがねばなりません。介護士が行うのはあくまでバイタルチェックに限られるので、そこから得られた結果を診断するのは医療従事者の仕事です。。
血圧測定
血圧も機械が自動で測ってくれますので、難しさはありません。手指、または二の腕にベルトを巻いたあとは、測定されている方が動いたり話したりしないように注意して結果を待ちます。最高値と最低値が提示されますが、記録する時は両方の数値を、長期にわたって記録することが重要です。
測定はできるだけ毎日同じ時刻にします。これは同じ条件(同時刻、安静時)の下で測定することで、変化を見えやすくするためです。前日にどのようなものを食べたか、何をしたかで翌朝の血圧に変化が現れるので、食事内容を見なおしたり、入浴時の湯船の温度を下げたりすることで高血圧予防につながります。
高血圧の基準値は最高値が140mmHg以上、最低値が90mmHg以上とされています。しかし、基準値内でも血圧の乱高下がある場合はクモ膜下出血の兆候とも言われており、油断はできません。ご本人が認知症を患っている場合は、めまいや吐き気などの予兆を自覚できないこともありますが、日々の血圧の記録があれば早期発見も可能になるのです。
脈拍測定
脈拍測定からは不整脈の早期発見が期待されます。1分間当たりの拍動が60から120回ならば問題なしとされていますが、この範囲を逸脱する場合は不整脈が疑われるため、検査が必要です。
バイタルチェックで健康を維持
このように、健康管理にはバイタルチェックが必要です。もちろん常日ごろ接している方が感じた、被介護者の様子の変化やその日の顔色など、数値には表しにくい変化を記録することも大切ですが、数値で記録することで第三者が見ても変化に気付ける利点があります。そして、その方に検査や治療が必要か否かを診断するのは、介護士ではなく医師です。
医師の仕事は体調を崩した方の診察と治療であり、体調不良を訴えていない方を診察することはありません。介護の現場では認知症の方も多く、ご本人が体調不良に気付いていないこともあるため、そのような方はかなり重篤になるまで診察の機会を得られない危険もあります。
そんな時に、ご本人に代わって体調の変化にいち早く気付き、診察を促せるのが、利用者一人ひとりの様子を身近に観察している介護士です。
介護の現場で行われるバイタルチェックは簡易的なものと思われがちですが、そこから得られる情報は、介護を受ける方の健康管理のために欠かせない、大切な介護業務の一部といえるでしょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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