介護保険の対象となる特定疾病【多系統委縮症】とは?
投稿日 2019/05/13
最終更新日 2019/05/13
特定疾病というのは、介護保険や医療保険のような公的な保険。または生命保険のような民間の保険において、他の病気とは違う扱いをされる病気です。それぞれの保険によって、対象となる病気は違います。介護保険における特定疾病には、がん、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、多系統委縮症など16の特定疾病があるのです。医療保険における特定疾病には、血友病、人工腎臓(人工透析)を実施している慢性腎不全など3つの疾病があります。また多くの生命保険で特定疾病と定めているのは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞の3大疾患です。
介護保険の対象となっている、特定疾病の多系統委縮症とは、どのような病気なのでしょう?
多系統委縮症ってどんな病気?
多系統委縮症は、脊髄小脳変性症の代表的な疾患です。
脊髄小脳変性症とは、脊髄や小脳の神経細胞に障害があることで発症し、手の震え、歩行時のふらつき、ろれつが回らない等の神経の症状がでる病です。後天性(非遺伝性)であり、発症する原因等はまだ解明されておらず、国の難病に指定されています。脳内の中枢神経細胞に含まれる、神経の伝達を担うグリア細胞。そのうちのオリゴデンドログリアという細胞の働きに異常をきたしてしまうために、神経の伝達機能にまで異常がでてしまうのです。
3つに分類される多系統委縮症の症状
多系統委縮症の主な症状は、大きく3つに分類することができます。小脳症状、パーキンソニズム、自律神経障害です。
小脳症状は、小脳に障害をきたして現れる症状。歩行時のふらつき、体のバランスを保てない、ろれつが回らない、手の震え、眼球が細かくゆれる、手足の運動障害などがあります。
パーキンソニズムは、パーキンソン病によく見られる症状で、運動が遅く少ない、筋肉が固くこわばる、手足が細かく震える、真っすぐ立っていられない等があります。
自律神経障害は、自律神経に障害をきたして現れます。症状は頻尿・尿失禁・排尿困難、排便障害、いびき・気道が狭くなる、睡眠時無呼吸症候群、起立性低血圧などです。
多系統委縮症は治療できるの?
多系統委縮症を治す治療方法は、現在はまだ確立されていません。現れる症状に対して、それぞれの治療をすることで対処しているのです。
パーキンソニズムや自律神経障害に対しては、薬物による治療を行っています。生活指導やリハビリテーションも行っていますが、症状は徐々に進行して限界をきたす場合が多いです。
さまざまな症状に合わせたケアの必要性
多系統委縮症の進行によって、さまざまな症状が現れるようになります。それぞれの症状に合わせたケアが大切です。
起立性の低血圧は、代表的な症状。在宅での療養中など、ベッドから起き上がる時に、意識を失ってしまうことがあります。
急に起き上がることがないように注意し、少しずつ上体を起して姿勢を変えるようにしましょう。
特に横になっている時間が長くなると、起立性低血圧になりやすいため、下肢に弾性ストッキングを付けるようにして起立性低血圧を予防してください。
小脳の症状には薬物治療が行われますが、リハビリテーションもとても重要です。日常生活の中で、積極的にリハビリを行えるような支援や介助をしましょう。歩行や会話など、まだ残っている機能を、無理のないように行うことが大切です。
栄養面に対してのケアでは、筋緊張等によって、嚥下機能が低下します。まずは嚥下状態をよく観察(把握)して、キザミ等の食べやすい状態に整えたり、とろみを付けたりして、誤嚥を予防するように注意しましょう。
まとめ
多系統委縮症は、治療方法がまだ確立されていません。現れる症状に対して、それぞれ適切に対応しなければなりません。
歩行が可能な時には、できるだけ歩くように支援をしましょう。会話が可能な時には話しかけたりして、残っている能力を最大限に引き出すことが大切です。
食事の際には、まずできる能力を見極めましょう。介助が必要かどうかを判断し、症状に合わせてキザミ食やトロミ食で対応しましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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