
薬の飲み過ぎ(ポリファーマシー)が引き起こすトラブルとは!?
投稿日 2019/04/15
最終更新日 2019/05/01
残薬問題と同じくらい、高齢者医療の課題として話題になることが多いポリファーマシー(薬の飲み過ぎ)。臨床的に必要とされる量以上の薬や不必要な薬が処方されている状態を指すポリファーマシーは、高齢化社会が進んだ日本の大きな問題として、多くの医療機関や医薬品会社なども注意喚起をするようになっています。
はじめてポリファーマシーという言葉を聞くという方も、薬の飲み過ぎが色々な弊害・問題を引き起こしているということを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。今回は、高齢者の方や介護生活を送る方にぜひ知っておいていただきたいポリファーマシーについて深掘り。デメリットやポリファーマシーを防ぐためにどんなことができるのか詳しく解説します。
ポリファーマシーって何?
Poly(多くの)・Pharmacy(調剤)という言葉から生まれたポリファーマシー。
ポリファーマシーとは患者さんに対してたくさんの種類の薬剤を処方してしまうことで、飲み間違いや残薬の発生、副作用などの薬物有害事象が引き起こされる問題を指す言葉です。
何種類以上の薬を処方されているとポリファーマシーであるという具体的な線引きはありませんが、高齢者の方の場合6種類以上の薬が処方されていると、様々な薬物有害事象が起こりやすいと言われています。
特に高齢者の方の場合、複数の病気を併発するケースも多く、自然と治療のために服用する薬の種類や数は多くなってしまいます。厚生労働省が公表している「平成29年社会医療診療行為別統計」では、75歳以上になると全体の25パーセント近くの方が7種類以上の薬を処方されていると言われています。
ポリファーマシーの問題とは?
では、一体ポリファーマシーとは具体的にどんな問題、弊害をもたらしてしまうのでしょうか?先ずはポリファーマシーの問題やデメリットを整理してみましょう。
薬物有害事象のリスクが上昇
ポリファーマシーのいちばんの問題は、臨床的に不必要な薬が投与・処方されることで副作用や意図しない症状、病気などが引き起こされるリスクが生じてしまうという点です。
厚生労働科学研究が発表している資料では、薬の飲み過ぎによって引き起こされる高齢者の薬剤有害事象として次のような有害事象が起きていたと報告されています。
- 意識障害
- 低血糖
- 肝機能障害
- 電解質以上
- ふらつきや転倒
- 低血圧
- 無動、不随意運動
- 便秘、下痢、腹痛
- 食欲不振、吐き気
本来であれば身体を楽にするための薬なのに薬物有害事象は、介護度の進行や持病の悪化を引き起こすリスクがあると考えると、無視できない問題ですよね。
高齢者の方の場合、そもそも体の代謝が低下していることから、飲んだ薬をきちんと代謝できず血中薬物濃度が上昇。副作用などの有害事象が出やすいと言われています。
薬をたくさん処方されがちであると同時に、薬物有害事象が起きやすい高齢者は特に、ポリファーマシー問題に注意する必要があると言えるのです。
薬代が増えてしまう
また、不必要にたくさんの薬を処方されることで引き起こされる弊害として、薬代の高騰が挙げられます。飲んで体の調子が悪くなる薬を、わざわざお金を出して購入しているというのは、なんとも不思議な話。
知らず知らずのうちに、大切な家計から不必要な薬代を出してしまっている可能性もあるのです。
飲みすぎを防ぐためにできること
薬の飲み過ぎを防ぐために、私たちは一体どんなことができるのでしょうか。
ポリファーマシー予防としてすぐにできることのが「お薬手帳」の活用です。薬局でもらえるお薬手帳には、アレルギーの有無や過去の副作用歴、過去の病歴、これまで処方された薬の量や種類など、所有者の薬に関する情報が全て記載されています。
病院にかかる際や薬局で薬をもらうときには、お薬手帳を見せ、専門家にみてもらうことでポリファーマシーを防ぐことができます。
お薬手帳は災害時や事故などの際にも役立ちますから、1冊にまとめておきましょう。
不安な場合はかかりつけ医やかかりつけ薬局に相談してみよう
ポリファーマシーを引き起こしてしまう原因はさまざまです。服用する薬が多くて不安という方は、気軽にかかりつけ医やかかりつけ薬局に相談してみましょう。病院がしまっている時間でも、薬局なら開いているというケースも多いもの。薬剤師さんを大いに活用して、ポリファーマシーを予防しましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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