
介護施設での虐待はどれくらいの確率で発生する?
投稿日 2019/06/21
最終更新日 2019/07/19
高齢化が進み、介護を受ける人の数も増え続けています。そして同じく表面化し、深刻な課題となっているのが高齢者虐待です。2006年4月に施行された高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)により、何が虐待にあたるのかが法的に定められ、施設などの職員には通報義務もあるのです。しかし施設での虐待事案は減ることはなく、増加傾向にあるのが実情です。介護施設において、いったいどのくらいの確率で虐待が起こっているのでしょうか。
増加する施設での虐待事案
高齢者介護施設での介護従事者による虐待件数は、残念ながら増えています。虐待と判断されるにいたったものは、相談や通報案件も含めると、ここ10年で年々増加しているのがわかります。
養介護施設従事者等によるもの | 養護者によるもの | |||
---|---|---|---|---|
虐待判断件数 | 相談・通報件数 | 虐待判断件数 | 相談通報件数 | |
29年度 | 510件 | 1,898件 | 17,078件 | 30,040件 |
28年度 | 452件 | 1,723件 | 1,723件 | 1,723件 |
増減 (増減率) | 58件(12.8%) | 175件(10.2%) | 694件(4.2%) | 2,100件(7.5%) |
厚生労働省:平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より
虐待を疑ったら、すぐに通報、相談する人が多くなったことが増加の要因だともいえます。虐待件数が増えているのは事実ですが、高齢者の虐待に社会的関心が高まっている表れだといえるでしょう。
認知症や介護度と虐待の深刻度
厚労省の同じ調査では、認知症の進行具合と虐待の程度の関連にもふれています。それによると、認知症が重い入所者ほど、虐待の深刻度も高いということがわかっています。虐待の種類は、身体的虐待が多くみられます。身体を傷つけたり、動けないように拘束したりするような行為は身体的虐待にあたります。 さらに要介護度が重度の入所者ほど、身体的虐待の割合が高い傾向にありました。要介護度が2以下の入所者は、心理的虐待、つまり暴言や無視、嫌がらせなどを受ける割合が高いというデータが出ています。 ちなみに寝たきりの入所者においては、身体的虐待やネグレクトケースが多くあるようです。 寝たきりや、認知症が重い場合は、高齢者と介護者の意思疎通が難しいことが要因の1つと考えられます。認知症の高齢者自身も精神的に不安定な状態が続き、感情をコントロールできない人も。そんな中で介護をするストレスが、虐待につながっていくのです。
男性職員が多い傾向に
虐待をした人592人の年齢別うちわけは「30~39歳」が132人(22.3%)、「40~49歳」が101人(17.1%)、「50~59歳」が94人(15.9%)、「30歳未満」が92人(15.5%)となっています。そのほとんどが介護職に従事する人(472人、79.7%)です。 性別は男性が325人(54.9%)、女性が252人(42.6%)。介護従事者における男性の割合は約2割。それをふまえて考えると、虐待する人の割合は、相対的に男性のほうが高いということになります。 性差や年齢だけで語ることは難しく、個人の資質による部分もあるのかもしれません。しかしまだ社会経験の乏しい若い世代にとって、精神的にも肉体的にも負担の大きい介護の仕事は難易度が高いということは間違いないでしょう。
虐待発生の確率はどの施設にもある
どんな施設であっても、「絶対に虐待は起こらない」とは言い切れません。だからこそ、家族が細部まで目を光らせておく必要があります。入所者にいつもと変わったところはないのか、傷やあざ、何かを怖がる様子等などを常に確認しておくことです。 虐待一歩手前の状態で気づき、未然に防ぐこと、つまりリスクマネジメントの考え方が必要になります。 さらに、積極的に職員に声をかけることも大切です。感謝の気持ちを表し、積極的なコミュニケーションを取ること。家族と交流を持つことが、虐待行為への抑止力になる可能性もあります。職員が疲れている、無表情などおかしいと思った時点で相談することも可能です。 100%虐待の発生しない施設など存在しないということを肝に銘じ、不安を感じたらすぐに動くことをおすすめします。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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