介護業界における「90日ルール」とは?
投稿日 2019/03/25
最終更新日 2019/03/25
介護業界における「90日ルール」をご存じですか?この90日ルールとは、2012年4月から施行された有料老人ホームへの入居一時金の返還金におけるルールです。
老人ホームなどの介護施設では、施設側と入居者間で金銭トラブルを起こすケースは少なくありません。実際、消費生活センターへの苦情や相談件数も年々増えてきています。トラブルを回避するためにも、介護業界における90日ルールは理解しておきたいです。
90日ルールとは?
有料老人ホームでは、国や都道府県の指導方針に基づいて「契約後おおむね90日以内の解約については一時金を返還する」という短期解約特例制度(90日ルール)が設けられています。この制度に従い90日以内であれ途中解約の場合、一時金の返金を行っていました。
しかし、以前は「90日ルール」に法的な拘束力がなかったため、老人ホームの中にはこの決まりを守らない事業者もたくさんいたのです。実際、全国の消費生活センターには途中解約の返金トラブルついて相談が数多く寄せられています。
そこで、厚生労働省では「90日以内に老人ホームから退去する場合には、一時金など前払い金は経費を除いて全額返金をする」という短期解約特例制度(90日ルール)を法制化。
平成24年度の老人福祉法改正時に法律で義務付けられるようになりました。
この法制化に伴い、90日ルールを設けていない事業者に対して、積極的な行政指導が行われるようになったのです。利用者から契約解除の申し出を受けた時には、老人ホーム側は90日ルールに従って、一時金を支払わなければなりません。
3ヶ月以内に契約が終了した場合の返還金は「返還金=(老人ホームの家賃の前払金額)-(1ヶ月分の家賃額)÷30×(入居日から起算して契約終了日までの日数)」で計算することができます。
重要事項説明書とは?
有料老人ホームでは、思わぬところで費用請求が発生するなど、費用面でのトラブルは後を絶ちません。この費用面でのトラブルを回避するためには「重要事項説明書」が重要になります。重要事項説明書は費用面の不透明さを解消するカギとなるのです。
重要事項説明書には、入居する施設の概要、サービス内容、職員配置、費用などについて記載されている書類です。契約する時は、この重要事項説明書の内容に沿って、事業者から利用者やその家族に説明することが法律上義務付けられています。介護報酬の改定や個人負担額の増減によって値上げする旨など、料金の改定についての条項もしっかりと記載されているので必ず読んで確認しておきましょう。
トラブルに巻き込まれないために注意しておきたいこと
有料老人ホームにせっかく入居できたのに、金銭面での問題や悩みはストレスになります。快適な老人ホーム生活を送るにはどうすればよいでしょうか?ここでは、トラブルに巻き込まれないために注意しておきたいポイントをいくつかご紹介します。
事前の説明会、施設の見学には必ず参加しよう
有料老人ホームの入居を検討する際には、入居希望者を対象とした説明会や施設見学会などには積極的に参加したいです。費用、サービスに関する説明があった場合は、その内容をしっかりとメモしておき、わからない点があれば担当者にすぐに確認しましょう。
90日ルール適用時の違約金、返還額を把握する
90日ルール適用時に置ける違約金や、返還額に関しては、算出方法を知っておくべきです。
返還額は、全額から入居期間中に発生した生活費、原状回復費にかかる金額を差し引いた金額になります。
重要な契約書類はまとめて保管する
重要事項説明書など契約時の大切な書類は、ファイルなどにまとめて保管しておくようにします。紛失を防ぐために、コピーを1部取っておけば安心です。
わからないことは専門機関へ相談をする
金銭面のトラブルが起きた場合、素人ではどうすることもできないケースも多いです。困った時には、消費生活センターや法テラスなど専門機関へ相談するようにします。1人で悩みを抱え込まないようにしましょう。
まとめ
日本では長生きする高齢者が多いため、有料老人ホームなど介護施設を利用する人はたくさんいます。このような介護施設を長期間利用すると、費用負担も長期化するので戻ってくるお金はとてもありがたいです。
90日ルールや重要事項説明書などの存在を知らずにいると、事業者とのトラブルで損をしてしまう可能性もあります。90日ルールや重要事項説明書の重要性を知ることで、トラブルを回避できたり、施設選びがスムーズに行えたりするでしょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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