
認知症と物忘れは何が違う?
投稿日 2019/03/21
最終更新日 2019/06/03
物忘れがあると「認知症になったのかも?」と心配する方が多いですが、年齢を重ねると誰もが物忘れをしやすくなります。加齢による物忘れは、認知症による物忘れとは全く別ものです。ここでは、認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いをまとめてみましょう。
歳をとると誰でも物忘れしやすくなる
高齢になると脳の機能が衰えるため、誰でも物忘れしやすくなります。財布や鍵が見つからない、今日約束をしていたはずの予定が明日だった……など誰もが物忘れを経験したことがあるでしょう。
人の脳は、加齢とともに機能が老化し、記憶力、判断力、適応力が徐々に衰えていきます。
記憶力は20代をピークに加齢とともに減退し、60歳頃になると記憶力だけではなく、判断力、適応力にも衰えがみられるようになるのです。
加齢による物忘れの特徴として、「財布をなくした」ということを覚えており、物忘れに対する自覚があります。全てのことを忘れているのではなく、体験したことの一部を忘れるケースが多いです。また、何かしらのヒントがあれば思い出すことが多く、判断力も低下していないので、日常生活に支障をきたすことはありません。加齢による物忘れは自然現象なので、認知症症状とは異なります。
認知症症状で起こる物忘れとは?
記憶を再生する能力が衰える老化現象とは違い、認知症では物ごとを記憶する機能自体が障害されます。財布をしまったことを忘れる、約束したことを覚えていないなど、そのこと自体を覚えられません。そのため、ヒントがあっても思い出すことはできず、物忘れに対する自覚がないのが特徴です。判断力も低下しているため、日常生活に支障をきたすことも多くなります。
例えば、アルツハイマー型の認知症においては、直近の記憶を覚えていないため、同じことを何度も聞く、ご飯を食べたことを忘れて何度も食事を催促する……などの症状が出やすいです。本人は経験したこと自体を忘れているため、それを繰り返しているという自覚は全くありません。認知症では記憶することが難しくなるものの、過去の記憶は再生できます。
認知症の物忘れチェック項目
認知症による物忘れの場合、以下のチェック項目が当てはまります。
最近、物忘れがひどいという場合には、ぜひセルフチェックしてみましょう。
- 直前にしたことや、話したこと忘れてしまう
- 何度も同じことを聞いたり、話したりする
- よく知っている人の名前を覚えていない
- 買い物に行くたびに同じものを買ってくる
- 冷蔵庫に同じものがたくさん入っている
- 置き忘れ、しまい忘れが目立つようになり、いつも探し物をしている
- 曜日、日付が分からず何度も確認する
- 薬の飲み忘れや飲んだかどうかが分からなくなる
- 水道、ガス栓を閉め忘れるなど、火の用心ができなくなった
- 物をなくして、ぬるまれたと人を疑う
- 約束の日時、場所を間違えるようになった
この項目に、多く当てはまる方は早めに病院を受診するようにしましょう。
認知症の物忘れにはどのように対応するべき?
認知症による物忘れは、家族など周囲の人にも影響があります。何度も同じことを聞いてきたり、言ったりすると、家族としてはイライラしてストレスがたまるでしょう。
しかし、本人にとっては経験していない出来事になるので、怒ってはいけません。対応する側は、本人を責めずに理解することが大切です。
例えば、夕食を食べたのに、何度も夕食を催促された場合には、「さっき食べたでしょう」と怒るのではなく、「お茶を飲んで待っておいて」など気をそらすような対応をしましょう。
日常生活に支障が出ている場合、家族だけではなく本人も戸惑いを感じています。物忘れを起こしている認知症患者と、家族などそれに対応する側とでは世界観が違うという認識を持つことが大切です。叱ったり、否定したりするような言動は控えるようにしましょう。
また、物忘れを補うために様々な工夫をするのもおすすめです。例えば、薬の飲み忘れを防ぐためにカレンダーに印をつける、食事を食べたらチェックするなど、目に見えるルールを家族で決めておくのです。ルールを作っておけば、本人にも説明しやすく、納得してくれます。
まとめ
認知症による物忘れは加齢による物忘れとは違い、生活に支障が出るため、本人よりも家族など周囲の方が気づきやすいです。認知症は早期発見、早期治療が重要になるので、早めに診断されれば、認知症の進行を遅らせることもできます。もちろん物忘れだけが認知症の症状ではありませんが、初期の症状として物忘れは多いです。少しでも気になる物忘れがあれば、早めにかかりつけの医師や、専門の医療機関を受診するようにしましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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