
高齢者が気をつけたい薬の重複投与
投稿日 2019/01/23
最終更新日 2019/03/21
高齢者にとって、薬の重複投与は命取りになりかねません。年齢が高くなると、健康リスクが高まります。体調を崩して病院へ行けば、たくさんの薬を処方されることになるでしょう。厚生労働省の『平成28年社会医療診療行為別統計の概況』によると、75歳以上の高齢者の薬剤種類数は院内処方で4.31種類、院外処方で4.64種類です。
7種類以上服用している人は院内処方で21.1%、院外処方で24.8%。約4人に1人の割合で、7種類以上薬を使用しています。飲まなければならない薬が増えると出てくる問題が、重複投与です。ただ、重複投与によってどのような問題があるか、具体的に分からない部分も多いでしょう。高齢者や家族は、薬の重複投与による健康リスクを知っておいて損はありません。
重複投与とは
重複投与とは、病気や症状に効果のある薬を他の病院でも処方されることです。結果、薬を過剰に飲んでしまうことにつながります。病気や症状の治療で投与される薬ですが、たくさん投与すれば問題が起きても不思議ではありません。ひとつの病院で内科のみ通院し、各科情報の共有ができているなら医師も管理しやすいです。
ただ、複数の病気を抱え、いくつもの病院へ通っていると、病院や医師側で服用中の薬の情報を共有し管理するのはむずかしくなります。患者からどんな病気を持って薬を服用しているか教えてもらわなければ分からないからです。患者自身も、別の病院でどんな薬を処方されているか正確に把握していなければ重複投与のリスクは高まります。「健康のための薬だからいくら飲んでも大丈夫」というのは勘違いです、重複投与で一番注意したい問題は、薬の副作用による健康リスクと言えるでしょう。
重複投与が引き起こすリスク
重複投与の大きな問題点が副作用です。薬は病気や症状を軽くしたり治したりするために用いられます。投与する目的に対する作用が主作用です。ただし、主作用以外の働き方が生じる場合もあります、それが副作用と呼ばれている症状です。
風邪薬で言うと、鼻水や発熱、のどの痛みやせきなどの諸症状に対する緩和が主作用です。一方、副作用として眠気が生じる風邪薬もあります。薬が6種類を超えると副作用が生じるともいわれているので注意してください。薬の成分によっても変わりますが、懸念される副作用として、めまいやふらつきなどがあげられるでしょう。
高齢者の場合、ふらついて転倒し、骨折する可能性もあります。薬は病気や症状の改善をサポートしてくれますが、本来、体にとっては異物です。無害化するには肝臓や腎臓に働いてもらわなければなりません。しかし、高齢者は肝臓や腎臓の機能が低下していることも多く、病気もあれば成分を無害化して体外へ排出するのがむずかしい場合もあります。結果、副作用が生じてしまうと考えられるのです。また、副作用で腎臓など内蔵機能が低下する場合や、糖尿病の薬で低血糖が生じるケースもあるので注意しましょう。
重複投与を避けるために
薬の重複投与は意識して対策を行えば怖くありません。対策の基本は、処方されている薬を把握しておくことです。特に、複数の病院へ通院し、薬も多く処方されている人こそ注意しなければならないでしょう。病院へ行くときは、必ずお薬手帳を持って行くことはもちろん、診療科ごとに薬局を変えるのではなく、ひとつに絞ることも対策となります。
家族に高齢者がいるなら、日頃の様子にも注意してください。例えば、薬を5つ以上服用している人は、ふらつきや転倒のリスクが高まるといわれています。薬が6つ以上になると、副作用の可能性も高まるのです。また、患者が独自に活用しているサプリメントや漢方薬にも気をつけましょう。成分次第では副作用のリスクがある商品もあります。サプリメントや漢方薬を活用している人は、まず、医師に相談するようにしてください。
まとめ
複数の病気を持って多くの病院へ通院し、薬をたくさん処方されている人は、高齢者に限らず重複投与に注意してください。高齢者の家族も、本人以上に薬の重複投与には気をつけましょう。自分自身が処方される薬を把握し、お薬手帳を医師に見せ、情報を共有するようにすることも有効な対策です。薬を服用してから、ふらつきや副作用があった場合、すぐに医師へ相談してください。副作用は体力が低下している高齢者などは、生命の危険につながる場合も高いので、家族みんなで協力し油断しないようにしましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
関連記事
- 高額介護合算療養費って何?分かりやすく解説
高齢者の介護費用、医療費用は、毎年のように制度の改正が行われ、本来保障されるべき負担額の上限が吊り上げられています。もともと収入源の少ない高齢者やその生活を支える家族にとっては、年々厳しさを増していま
詳しくみる - 介護施設にあったほうが良い医療サービス
介護施設が提供している医療サービスは、なにも医療行為に限定されたことではありません。万が一の時の医療機関との連携など、快適で安心した生活を送るために必要なサービスがたくさん用意されています。 しかし、
詳しくみる - 在宅医療に必要な費用とは?利用できる保険はどれ?
現在、介護もいろいろな形を選べるようになりました。「住み慣れた自宅で治療、療養させてあげたい」「病院に通うのが大変になので、在宅医療を考えている」というご家族も多いことでしょう。 しかし、病院での治療
詳しくみる - 介護施設での虐待はどれくらいの確率で発生する?
高齢化が進み、介護を受ける人の数も増え続けています。そして同じく表面化し、深刻な課題となっているのが高齢者虐待です。2006年4月に施行された高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する
詳しくみる - どんなに辛くても絶対避けるべき介護離職
在宅介護を何年も続けていると、仕事を辞めて介護に専念しようと考え始めるのも珍しくはありません。職場と自宅の往復で介護と仕事に明け暮れていると、心身ともに疲労が蓄積します。どちらかを手放して時間を取ろう
詳しくみる - 介護うつにならないためにしておくべき5つのこと
在宅介護をしていれば、どんな方でも常に「介護うつ」になる危険があります。うつ病を発症する方には性格的な特徴があるといいますが、介護うつに限っていえば、おそらくどのような性格であっても危険度に違いはあり
詳しくみる
あなたにおすすめの介護施設
エリアから探す
全国の介護施設を検索することができます。都道府県を選択してください。