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介護の仕事は幅広く、要介護者の話し相手や食事の介助をするだけではありません。体位変換や移乗介助なども介護の重要な仕事であり、むしろそちらのほうが介護のメインといってもいいでしょう。要介護者に身体的な能力がなく、体位変換や移動などで、要介護者本人からの協力を得られないのであれば、介護者の力だけで体を動かさなければいけなません。そうなると、介護者にかかる身体的負担は相当なものになります。そのため、介護者の中で慢性的な腰痛に悩まされている人も少なくないのです。ボディメカニクスは、そのような介護者の身体的負担を軽くするための考え方といっていいでしょう。ここでは、介護者のためのボディメカニクスであり、その考え方は、最終的には要介護者のためでもあることを説明していきます。

ボディメカニクスとは?

ボディメカニクスは英語で書くと「body mechanics」で、それぞれ「body=身体」「mechanics=機械学」となります。日本語では身体力学と訳されるのですが、その意味するところは深く、物理学はもとより解剖学や生理学における力学の基礎知識を活用しています。

介護者の中には、介護の仕事を続けたくても、腰痛などの身体的な理由で介護の世界から離れないといけない場合もあります。そのような介護者の身体的負担を軽くし、腰痛を防ぐ手段のひとつとしてボディメカニクスがあるのです。このボディメカニクスを取り入れることで、要介護者の安全につながることも忘れてはいけません。介護者・要介護者の双方にメリットのある技術なのです。

介護者だけでなく要介護者の負担減にもなる

先述しましたが、ボディメカニクスは介護者だけのためにあるのではなく、要介護者にとってもメリットのある技術です。

① 少ない力で介護を行う

ボディメカニクスの考えは無駄を省いて少ない力で介護を行うことです。これは決して手を抜くということではありません。全力で行っていた体位変換や移乗介助などがこれまでと同じようにできて、かつ力を半減できれば介護者にとって身体的負担というのは文字通り半減できます。そうなると、これまでの半分の力でよいのですから、要介護者にかかる力もこれまでの半分になるのですから、同時に要介護者の身体的負担も半減することが可能です。力まかせに行ってしまうと、介護者・要介護者双方に負担がかかります。力をできるだけ少なくしながら、これまで同様に体の向きを変える、体を起こす、さらには体を移動させることができれば、ボディメカニクスを大いに活用しているということになるのです。

② ボディメカニクスの基本は低重心

ボディメカニクスで大切なのは重心を低くすることです。重心を低くすることによって姿勢が安定するので、効果的に力を使って介護を行うことができます。また、できるだけ要介護者に寄り添うようになるべく体を近づけることで、力を有効に使うことができ、それがお互いの身体的負担を軽くすることにつながることも覚えておきましょう。

ADLを高める意識を持とう

ADLは日々の生活の中で行う基本的な動作、例えば食事や入浴、移動、排泄などのことを指します。一般的に日常生活動作をADLと呼んでいると考えていいでしょう。

①ADLの意識を高める

昨今の介護の現場では、要介護者の残存している身体能力に着目した介護が行われています。つまり、できることとできないことをしっかりと把握して、できることに着目して介護を行うということです。これには、当然のことながらADLに対する意識を持つことが大切になります。そうしないと、できることがいつのまにか「できるだろう」に変わってしまい、それが転倒や転落といったトラブルにつながっていくからです。具体例としては、排泄そのものをオムツに頼っていると、トイレに行かなくてもいいと解釈してしまい、その時点で要介護者のADLは低下してしまいます。「できること」からADLの意識の向上を目指すことで、要介護者の身体的能力を維持することができるようになりますし、介護する側もしっかりとADLを意識することが大切です。

② ADLを維持するためのボディメカニクス

力まかせの介護になってしまうと、介護者にも要介護者にも負担になってしまいます。また、全て介護者の力で解決してしますと、要介護者の残っている身体能力まで衰退させてしまいます。要介護者の残存能力を引き出すためにも、ボディメカニクスは役立つのです。大切なのは、要介護者の体を点で支えるのではなく面で支えるといったことを意識することです。これによって介護者の力を軽減させることができ、要介護者もがっちりホールドされないところから、体を安定させようと、ADLの意識を高めることにつながります。

まとめ

介護を長く続けるためには、自分の体を守ると言うことも大切になります。そのためには、体の負担を軽くすることが必要で、そのために考え出されたのがボディメカニクスです。要介護者は介護されることに申し訳ない気持ちになることが少なくありません。介護者の身体的負担を考えるとそう考えてしまいがちなのですが、介護者が身体的負担の少ないボディメカニクスをマスターすれば、介護者の安心にもつながります。日頃からADLを高める意識とともに、ボディメカニクスを取り入れた動作を身につけるようにしましょう。

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田中 晴基

(介護施設スペシャリスト)

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