老人ホーム入居前にやっておきたい銀行口座の整理
投稿日 2019/05/21
最終更新日 2019/05/21
遺産相続で遺族が困ることの一つは銀行口座関係のことです。「遺産の総額を把握したいのに、銀行口座がどこにあるか分からない」「銀行口座が凍結してしまって、お金を引き落とせない」なんてことはよく聞く話ですね。
「ただでさえ遺品整理で大変なのに、これ以上問題が増えるなんて…」と頭を抱える遺族の方も多いことでしょう。——ということで、本人が逝去したあとに慌てないように、介護施設入居前に対応しておきたい銀行口座周りのことについて解説していきたいと思います。
銀行口座は本人の死亡後に凍結されてしまう
銀行は、本人の死亡が確認されると直ちに銀行口座からお金が引き出されないように口座を凍結するようになっています。銀行口座の預貯金は全て遺産となるため、家族であっても勝手に口座にお金を振り込んだり引き落としたりさせないためにこのようなシステムになっているのです。
遺産は相続人の数や遺産総額が判明してようやく遺族に分配されるものであるため、その金額が本人の没後に変動してしまうと、後々トラブルになってしまうのです。このようなトラブルに巻き込まれてしまうことは、銀行としても不本意です。このため、本人の死後にすぐに口座が凍結するようになっているのです。
凍結の解除には手続きが必要になる
さて、この凍結の解除は銀行がトラブルに巻き込まれないために行っていることですから、家族であるからといって簡単に解除できるものではありません。凍結の解除には、以下のような書類が必要になります。
- 相続手続きに関する依頼書(銀行書式で、相続人全員の署名、捺印が必要)
- 被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本
- 相続人(遺産を受け取る人)の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 凍結解除を行う口座の通帳・印鑑・カード
上記の書類はもちろん銀行口座を複数持っている場合はその分だけ必要になってしまします。そして、この凍結は相続が完了するまで継続することになります。
まず、相続の総額が分からなければ誰にどれだけ相続税がかかるのかも分かりません。このため、家族の誰かがどこに口座を持っていて、どこにどれだけのお金が入っているのかを把握しておく必要があるのです。
口座の整理は介護施設に入居する前に
介護施設を終の棲家として考えている場合は特にですが、銀行口座の整理や生前の家財整理などは施設入居前に終わらせておいたほうが良いでしょう。先にも解説した通り、本人没後には遺品整理などで遺族は非常に大変になってしまいます。
このため、銀行口座もできるだけ遺族が相続しやすいようにまとめておく必要があるのです。以下では、具体的にどのようなことをすれば良いかを解説していきます。
家族名義の口座をつくっておく
本人の銀行口座が凍結されてしまうと、それまで銀行口座から引き落とされていた支払いができなくなってしまいます。例えば、水道料金や電気料金のような公共料金の支払いや、クレジットカードの支払いなどができなくなってしまうのです。
このため、家族名義の口座をつくっておき、生活費等については本人の没後にも支払える状態にしておいたほうが良いです。また、生活費(年間110万円以下)であれば、贈与税はかかりません。家族名義の口座をつくり、数年間かけて本人の口座から預金をうつしておくことで、相続税対策にもなるのです。
本人名義の口座は一つにまとめておく
よほどの事情がない限り、銀行口座を一つにまとめておくほうが相続をする時にスムースになるでしょう。本人が株式の投資や外貨取引のような資産運用をしていた場合、家族が知らない口座があることもありますので、こういった口座もできる限り少なくしておくと良いでしょう。
困った時は専門家に相談しよう
銀行口座が凍結したり、遺産相続に関するトラブルが発生したりすることを避けたいのであれば、事前に行政書士や司法書士、弁護士などのスペシャリストに相談しておくと良いでしょう。場合によっては税理士に相談してみても良いかもしれません。
特に弁護士は相続に関する主な相談先になりますので、「何をすれば良いか分からない」という場合は相続を主たる業務としている弁護士事務所に問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ
お金周りのことは、本人が没後にいろいろとトラブルに発展しやすいものの代表です。本人の死後のことを考えるというのは、とても勇気がいることですが、介護施設に入居する前に済ませておくようにしましょう。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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