
食べ物を飲み込むときに総入れ歯は無力だった?
投稿日 2019/01/08
最終更新日 2019/03/21
嚥下とは、食べ物を飲み込むだけと捉えられていますが、それには限りません。嚥下は食べ物を目で見て・口に運んで・咀嚼(そしゃく)して・飲み込むまでの一連の運動を指します。正しい嚥下は食べ物を飲み込むという目的のほかに、誤嚥を防止する働きがあるのです。
高齢者になればなるほど、嚥下が難しくなり、誤嚥のリスクが高くなります。そこで、今回は嚥下についての正しい知識と、ある調査からわかった入れ歯よりも嚥下に大切なことについて紹介していきます。
嚥下の捉え方
嚥下は、食べ物を食べる一連の過程を現します。この過程を、認知期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期の5期に分類して考えることができます。実際に、これら5期がどのような時期なのか紹介していきます。
認知期
認知期は、食べ物を目で見るだけでなく匂いや温度を感じる時期です。また、硬さを認識して噛む力を頭の中で想定するのも認知期の仕事になります。認知期に問題が起きると、食動作が始まりません。主に鼻疾患などで、匂いを感じられない場合は認知期に問題が生じやすいです。
準備期
準備とは、食べ物を口に入れて咀嚼する時期です。唾液と混ぜながら、咀嚼した食べ物を飲み込みやすくしています。歯が抜けてしまって咀嚼がうまくできないなど、準備期に問題がある場合は、食べ物を細くできず、窒息するリスクが高くなります。
口腔期
口腔期とは、咀嚼した食べ物を咽頭に送り込むことです。舌を上顎につけて、おこなうため、脳血管疾患や舌がんの手術の影響などで、舌機能に低下してしまうと口腔期に障害が出てしまいます。
咽頭期
咽頭期とは、食べ物を飲み込むことをいいます。この時期に障害が起きると気管に誤飲しないための弁の働きが弱くなり、誤嚥が起きやすくなります。
食道期
食道期とは、咽頭期で送られた食べ物が通過することをいいます。自分でコントロールできないですが、障害が起きると逆流性食道炎などを発症しやすいです。
嚥下障害はなぜ起きる?
嚥下障害を引き起こす主な疾患には以下のもがあります。
- 神経反射の低下
- 筋力の低下
- 手術の影響(がんや口内炎・唇顎口蓋裂)
- 脳血管疾患
- パーキンソン病
これらの疾患を抱えている人や、後遺症を抱えている人は嚥下障害が起きやすいです。嚥下障害は、咽頭期で起きる反射反応の低下することが主な原因ですが、口腔期に舌が喉へ送り込む力が低下することも嚥下障害を引き起こす原因になります。
舌を上顎に押し付けて、喉元へ食べ物を送ります。
入れ歯が重要と考えられた理由
従来、嚥下障害を抑制するには入れ歯が重要と考えられていました。これは、入れ歯を装着すると舌の筋力が低下しても、上顎との距離が近くなるため舌を当てやすくなるからです。
しかし、東京医科歯科大学高齢者歯科学講座の発表した「全部床義歯装着が高齢無歯顎者の嚥下機能に及ぼす影響」では、入れ歯が誤嚥防止に直接関係しないという結果を示したのです。
とはいっても、入れ歯は大切
入れ歯は誤嚥抑制には効果が薄いことがわかりましたが、入れ歯は大切です。咀嚼効率をあげるだけでなく、見た目の改善にも繋がります。先ほどの5期で解説すれば、入れ歯は準備期と口腔期を円滑にするもので、食道期には影響を与えません。誤嚥性肺炎などを防止するために、最終的には舌の動きと筋力が必要ということになります。加齢とともに低下しやすい、舌の筋力だけでなく喉の反射を強くする運動など口腔機能を維持・強化する方法は多く存在します。
また、入れ歯はケアをするのが大切です。できるだけ清潔に保つようにして、入れ歯が原因で口内炎や肺炎を引き起こさないようにしましょう。入れ歯も定期的に調整しなければ準備期と口腔期の機能を低下させることにも繋がります。
弊社担当者のご紹介
田中 晴基(介護施設スペシャリスト)

入社3年目の田中と申します。前職での介護経験を活かしお客様のご希望にマッチングした施設をご提案します。また介護のあらゆる問題をテーマにしたコラムも執筆し幅広く情報発信しています。
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