「一億総活躍社会」とは、第3次安倍改造内閣が掲げた「一億総活躍プラン」。「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、 障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会」の構築を目的としたプランです。

「日本経済再生のため、少子高齢化時代の新しい経済のあり方を構築する」という大きな目標に対する取り組みで、新3本の矢を軸に、「経済成長」「子育て支援」「安定した社会保障」の実現を目指しています。

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高齢者雇用の現状

自民党・一億総活躍推進本部は、<65歳までは「完全現役」、70歳までは「ほぼ現役」、65歳~74歳までは「シルバー世代」>として、同時に年金の繰り下げ受給年齢を71歳以上とすることを提言しました。

表向きは元気な高齢者に働いてもらうという内容ですが、実質年金支給開始年齢を70歳に引き上げるもの。つまり、「高齢でも働けるのだから年金支給は遅らせる」と宣言しているのです。

確かに、働く意欲のある高齢者に働ける環境を提供し、会社と合意の上で働き続けるのは何の問題もありません。しかし、そうした人がいる一方、全ての人が働き続けられるわけでも、働くことを望んでいるわけでもありません。

年金の支給年齢が71歳以上になれば、老後の年金暮らしを想定していた人は、働かざるを得なくなるでしょう。労働力人口不足が深刻化しているとはいえ、これでは年金受給を遅らせて高齢者を半ば強制的に働かせることになります。
最も困るのが、病気を患っている人や要介護者など、働くことができない高齢者です。収入がなく年金まで断たれたのでは、生きていく術がありません。

高齢者も働いてほしいという一方で、労働環境の整備などは一向に進んでいません。

現状、60歳以上の年齢で働き続けている人の多くは非正規雇用です。定年前とほぼ同じ仕事をしているのに、雇用形態が正社員から嘱託に変わり賃金は半減。こんな状態で活躍を求めるのは無理という物。高齢者を労働力として働かせたいのなら、「同一労働同一賃金」を導入し、まずは労働環境を整備するべきではないでしょうか。

環境も条件も整えずにただ働けというのは、使い捨ての労働力がほしいだけのブラック企業と同じ発想です。

働き方改革と高齢者

上記で述べたように、一億総活躍社会は「あらゆる場で誰もが活躍できる、全員参加型の社会」としているものの、実際は「高齢者が社会保障を支えろ」という内容にしかなっていない状況です。74歳までは年金を我慢して働くよう、年金を「もらう側」ではなく税金や保険料を「払う側」でい続けることが求められています。

一億総活躍社会の実現に向け打ち出された「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」という新3本の矢。

この内、「安心につながる社会保障」について、安倍首相は「社会保障は、高齢者の皆さんのみならず、現役世代の『安心』も確保するものでなければならない」と提言しています。

この言葉が働き方改革のはじまりだったはず。それなのに、このままの状況が続けば、社会保障は高齢者の犠牲の上に成り立つ形になってしまっています。一体、どこに向けた「安心」なのでしょうか

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活躍が強いられる高齢者

現状、政府が声高に掲げる「1億層活躍社会」の実現は、まだまだゴールが見えない状況です。具体的な数字として、名目GDP600兆円の実現を目指していますが、実現できるのは何年後になるかわかりません。

1億の半数が高齢者、非正規雇用、障害者、母子家庭であり、こうした層を活躍させるための準備もしているとはいい難い中、ただ言いたいことを言っているだけにしか思えないのが現状です。つい最近大きな問題として各メディアでも取り上げられた、障害者雇用水増し問題もあり、働き方改革とは何か、一億総活躍社会とは何か、改めて考えるべきではないでしょうか。

働き方改革は、単なる長時間労働の是正等、労働条件の改善のためだけの取り組みではありません。もちろんそれは重要な施策の一つではありますが、少子高齢化時代の日本経済再生のため、新しい経済のあり方を構築するための取り組みだったはずです。

これから先、働き方改革が「高齢者を働かせるためだけの改革」にならないよう、表層の言葉だけではない中身の伴った改革が求められます。まずは現実に即した労働環境の整備が必要です。

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