
介護職員の暴行は何が原因なのか?
2018年8月、老人ホームに入所する88歳の認知症女性を暴行の末殺害したとして、老人ホームの介護職員が逮捕されました。
このほかにも、老人ホーム内で起こる虐待のニュースは後を絶ちません。
高齢者虐待防止法に基づいた調査では、虐待と認められた件数は、養介護施設従事者等によるものが平成27年度で408件と、前年度より108件(36.0%)増加。養護者によるものは15,976件と、前年度より237件(1.5%)増加したという結果が出ました。また、暴行・虐待に関する市町村への相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,640件と前年度より520件(46.4%)増加。養護者によるものは26,688件と前年度より897件(3.5%)増加しています。
超高齢社会と呼ばれて久しい日本において、高齢者への暴行・虐待はなぜ頻発しているのでしょうか。
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インターネット上のさまざまな声
しかし、こうした批判の声が多い一方で、一部では介護職員に同情する声も散見されます。暴行は絶対に許せないという前提ではあるものの、職場環境や職務内容、待遇などを考えると、現場の人間はどれだけ追い詰められているのか、同情するという内容です。
暴行は犯罪です。まして、介護が必要な高齢者という、抵抗すらできない弱者をストレスのはけ口として虐待するなど、行為その物は決して擁護できるものではありません。しかしその一方で、そうした行動に至るまでの経緯や状況などを考慮して、問題点は改善していくべきではではないでしょうか。労働環境など、少しずつでも問題を解決していくことで、こうした凄惨な事件を減らすことができるのなら、真剣に考え取り組んでいく必要があります。
介護業界の人材不足
少子高齢化が著しい日本では、介護が必要となる高齢者が増加する一方で、現役世代は減少していくため、当然の流れといえるかもしれません。事実、介護業界に限らず人手不足はどのような業界でも問題となっています。
しかし、ことはそう簡単な話ではありません。
介護業界では、人材不足が人材不足を招く負のスパイラルとなり、退職する人が後を立たず、人を増やすどころか逆に減っているという状況になっているのです。
また、人手不足は、「現場が回らない」という問題から人材の質を低下させることにもつながります。介護業界は離職率の高さも問題となっており、3年で半数以上、5年でほぼすべての介護職員が辞めるとさえいわれています。
しかも介護業界から去っていくのは、介護を辞めても他に転職先があるまともな人々たちばかり。人手不足なのでこれ以上辞めてほしくない雇用者と、辞めさせられないことを理解している介護職員という歪な関係が出来上がり、人材の質が低下していくのです。こうした人材の質低下も、暴行・虐待事件につながっていることが推察されます。
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介護職員の労働環境
人手が足りないということは、それだけ一人が負担する業務の量も増えるということ。朝早くから夜遅くまで働き詰めで、まともな休憩時間どころかトイレに行く時間すらとれない人もいるそうです。
こうした労働環境を招いた最大の原因は、やはり賃金の問題でしょう。
事実、介護業界の給与は全業種中最下位といわれています。また、給与が低いということは、それだけ社会的評価も低いということ。つまり介護職員は、過酷な仕事内容と評価が結びついていないのです。介護業界で長く働いてきたベテランや高齢者のためになりたいという意識がある人たちが、こうした現実に絶望して辞めてしまうのも、仕方ないことなのでしょう。
老人ホームの労働環境は、高齢者を取り巻く環境であるとともに、そこで働く介護職員の問題でもあります。どちらか一方を無視しては成り立ちません。
これ以上介護職員の暴行問題を起こさないために、何より介護業界で働く人が社会的に評価されるために、労働環境の一刻も早い改善が求められます。
深刻な人手不足への対応
決して待遇が良いとはいえず、まだまだ問題を抱える介護業界。暴行・虐待の問題も、事件を起こした犯人個人の問題と片付けることはできません。罪は当然問われるべきですが、介護業界全体、ひいては今後の日本全体の課題であることは間違いないでしょう。
こうした問題を受け、国は外国から介護職員の受け入れ政策を打ち出しました。外国人が日本で仕事をするには多くの規制があるものの、日本語を話せるといった条件をクリアすれば、高齢者介護を任せても良いというわけです。
国の対応が上手くいくかどうかは、まだまだ未知数です。しかし、こうした働きかけをきっかけに話し合いを重ねることで、状況が好転していくのではないでしょうか。
国や業界が打ち出す、今後の対応が期待されます。
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